「港湾工事を請け負うには、どの建設業許可を取れば良いのか分からない」「港湾工事業という業種はあるのか?」——そうお悩みの港湾・海洋工事業者の方は多いのではないでしょうか。
実は、建設業法の29業種に「港湾工事業」「海洋土木工事業」という業種は存在しません。港湾工事は工事の内容により土木一式工事業・しゅんせつ工事業・鋼構造物工事業・とび・土工・コンクリート工事業など、複数業種の許可で対応するのが原則です。
本記事では、港湾工事に必要な建設業許可の選定方法、専任技術者の要件、特定建設業の基準(令和7年改正対応)、申請手続きまで、建設業専門の行政書士が分かりやすく解説します。
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1. 港湾工事と建設業許可の関係【業種選定が最重要】

1-1. 「港湾工事業」は存在しない
建設業法に基づく29業種(2つの一式工事 + 27の専門工事)の中に、「港湾工事業」「海洋土木工事業」という業種はありません。港湾工事は、工事の内容に応じて複数業種の許可を組み合わせて対応します。
1-2. 港湾工事と29業種の対応関係
| 港湾工事の内容 | 該当する建設業許可業種 |
|---|---|
| 岸壁・桟橋・防波堤・護岸の総合工事 | 土木一式工事業 |
| 浚渫(しゅんせつ)工事 | しゅんせつ工事業 |
| 鋼矢板・鋼管杭・鋼製ケーソンの設置 | 鋼構造物工事業 |
| 基礎工事・コンクリートブロック据付 | とび・土工・コンクリート工事業 |
| 天然石を用いた護岸・根固め | 石工事業 |
| 海底ケーブル敷設 | 電気工事業・電気通信工事業 |
| 海底パイプライン敷設 | 管工事業 |
| 港湾内上下水道(本管布設) | 水道施設工事業 |
| 航路標識(灯器)の設置 | 電気工事業 |
| 港湾内の土木構造物の解体 | 解体工事業(500万円以上の場合) |
1-3. 業種選定を誤ると無許可営業のリスク
例えば、土木一式工事業の許可だけで500万円以上の浚渫工事を単独で請け負うと、しゅんせつ工事業の無許可営業となり、
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(建設業法第47条)
- 法人には1億円以下の罰金(両罰規定)
- 5年間の欠格期間で建設業許可取得不能
といったペナルティの対象となります。
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2. 主要業種別の要件|港湾工事で押さえるべき業種

2-1. 土木一式工事業
岸壁・防波堤・護岸・人工島など、総合的な企画・指導・調整のもと土木工作物を建設する大規模工事を元請として請け負う場合に必要です。
専任技術者の要件(一般建設業)
- 1級・2級土木施工管理技士
- 技術士(建設部門「港湾及び空港」「河川、砂防及び海岸・海洋」等/総合技術監理部門)
- 指定学科(土木工学・都市工学・衛生工学・交通工学)卒業+実務経験(大学・高専3年、高校5年)
- 10年以上の実務経験
2-2. しゅんせつ工事業
港湾・水路・河川等の底面の土砂や堆積物を除去し水深を確保する浚渫工事を単独で請け負う場合に必要です。
専任技術者の要件
- 1級・2級土木施工管理技士(土木)
- 技術士(建設部門・水産部門「水産土木」・農業部門「農業土木」等)
- 指定学科卒業+実務経験
- 10年以上の実務経験
2-3. 鋼構造物工事業
鋼矢板岸壁・鋼管杭桟橋・鋼製ケーソンなど、形鋼・鋼板等の鋼材を加工・組み立てて構造物を築造する工事に必要です。
専任技術者の要件
- 1級・2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装を含む)
- 1級・2級建築施工管理技士
- 技術士(建設部門「鋼構造及びコンクリート」等)
- 1級・2級建築士
- 指定学科+実務経験、または10年以上の実務経験
2-4. とび・土工・コンクリート工事業
港湾基礎工事、消波ブロック据付、海中作業、地盤改良など、基礎的な土工事全般で必要となります。
2-5. 解体工事業
港湾構造物の解体工事を500万円以上で単独受注する場合には、平成28年6月新設の解体工事業の許可が必要です。土木一式工事業の許可だけでは対応できません。
3. 港湾工事業者の建設業許可|取得5要件
港湾工事を請け負う事業者が建設業許可を取得するには、以下の5要件すべてを満たす必要があります。
3-1. 経営業務管理責任者(経管)の設置
法人の常勤役員等または個人事業主本人等のうち1人が次のいずれかを満たすこと(令和2年10月改正後の基準)。
- 建設業(業種問わず)で5年以上の役員等としての経験
- 建設業で5年以上の役員等に次ぐ地位での経営業務管理経験
- 6年以上の役員等経験(建設業以外を含む)+ 補佐経験 等
3-2. 専任技術者の配置(営業所ごと)
業種に応じた国家資格、または指定学科卒業+実務経験、または10年以上の実務経験のいずれかが必要です。複数業種を取得する場合、1人で複数業種の専任技術者を兼ねることが可能な場合があります。
例えば、1級土木施工管理技士は最大約10業種(土木一式・とび土工・石・鋼構造物・舗装・しゅんせつ・塗装・水道施設・解体 等)の専任技術者となれるため、港湾工事業者には非常に有利な資格です。
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3-3. 財産的基礎
一般建設業の場合、以下のいずれかを満たすこと。
- 直前決算で自己資本500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力(金融機関の融資証明等)
- 過去5年間継続して建設業の許可を受けて営業した実績
3-4. 誠実性
請負契約に関し、不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと。
3-5. 欠格要件に該当しないこと
破産者で復権を得ない者、禁錮以上の刑から5年経過していない者、暴力団員等に該当しないこと、社会保険加入義務を果たしていること等。
4. 一般建設業と特定建設業【令和7年改正対応】
港湾工事は大規模工事が多いため、特定建設業の取得が必要となるケースが多いのが特徴です。
4-1. 区分の判定基準
発注者から直接請け負った1件の工事について、下請に出す金額の合計が以下を超えるかで区分されます。
| 区分 | 元請として下請に出す金額 |
|---|---|
| 一般建設業 | 5,000万円未満 |
| 特定建設業 | 5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上) |
📝 【最新の法改正】 令和7年2月1日施行の建設業法施行令改正により、特定建設業の下請金額基準が 4,500万円→5,000万円(建築一式:7,000万円→8,000万円)に引き上げられました。古い情報を掲載しているサイトも多いので注意が必要です。
4-2. 特定建設業の専任技術者要件
特定建設業を取得する場合、専任技術者には1級資格または指導監督的実務経験(元請として4,500万円以上の工事における2年以上の経験)が必要です。
4-3. 特定建設業の財産的基礎
以下すべてを満たす必要があります(AND条件)。
- 欠損額が資本金の20%を超えないこと
- 流動比率75%以上
- 資本金2,000万円以上かつ純資産4,000万円以上
港湾工事の規模を考えると、特定建設業の財産的基礎を最初から備えることは負担が大きく、一般建設業から段階的に移行するケースが多くあります。
5. 港湾工事特有の留意事項
5-1. 関係法令と関係機関との協議
港湾工事は、建設業法のほかに以下の法令の規制を受け、関係機関との協議や許認可が必要となります。
- 港湾法:港湾管理者(地方公共団体等)への港湾工事許可申請
- 海岸法:海岸管理者への海岸保全区域内行為の許可
- 公有水面埋立法:埋立てを伴う場合
- 海上交通安全法:航路標識・航路啓開工事における海上保安庁との協議
- 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律:浚渫土の処理等
- 漁業法:漁業権との調整
- 環境影響評価法:大規模埋立等の場合
5-2. 安全管理・環境配慮
海上作業・水中作業・潮汐・波浪等の特殊な環境下での施工となるため、
- 海上作業員への安全教育の徹底
- 天候・海象急変への対応体制
- 濁水拡散防止・水質汚濁対策
- 騒音振動の抑制
- 海洋生物への影響最小化
など、陸上工事とは異なる安全管理・環境配慮が求められます。
5-3. 取得後の維持管理
許可取得後は、
- 毎事業年度終了後4ヶ月以内の決算変更届
- 役員・専技等の変更届
- 5年ごとの更新申請
が必要です。怠ると許可取消しのリスクがあります。
💡 取得後の継続義務はこちら 👉 建設業許可「取得後」に必ずやるべき3つの義務|更新で泣かないための管理術
6. 港湾工事の建設業許可に関するよくあるご質問(FAQ)
Q1. 「港湾工事業」という業種で建設業許可は取れますか?
取れません。 建設業法29業種に「港湾工事業」「海洋土木工事業」は存在しません。工事内容に応じて土木一式工事業、しゅんせつ工事業、鋼構造物工事業など複数業種の許可を組み合わせて対応します。
Q2. 浚渫工事を請け負うために必要な業種は?
しゅんせつ工事業が必要です。500万円以上の浚渫工事を土木一式工事業の許可だけで請け負うと無許可営業となります。
Q3. 申請手数料はいくらかかりますか?
知事許可(新規)で9万円(業種数に関係なく一律)、大臣許可(新規)で15万円の法定手数料がかかります。詳細は 👉 建設業許可の申請手数料を徹底解説
Q4. 1人の専任技術者で複数業種をカバーできますか?
可能です。 例えば、1級土木施工管理技士1名で、土木一式・とび土工・石・鋼構造物・舗装・しゅんせつ・塗装・水道施設・解体など最大約10業種の専任技術者になれます。港湾工事業者にとって最も戦略的な資格です。
Q5. 公共工事の入札に参加したい場合は?
経営事項審査(経審)を受審し、入札参加資格を取得する必要があります。港湾工事は公共工事の割合が高く、特に国土交通省の港湾事業や地方港湾管理者の発注に参加するためには経審の評点(P点・Y点・Z点)が重要となります。
Q6. 個人事業主でも港湾工事の建設業許可は取れますか?
可能ですが、現実的には法人化が推奨されます。 港湾工事は規模が大きく、特定建設業の財産的基礎(純資産4,000万円以上等)を考えても、法人化したうえで取得を進める方が事業展開上有利なケースが多いです。
7. まとめ|港湾工事の許可選定はYAS行政書士事務所にご相談ください
港湾工事における建設業許可は、
- 「港湾工事業」という単一の業種は存在しない
- 工事内容に応じて土木一式・しゅんせつ・鋼構造物・とび土工等の複数業種を選定
- 1級土木施工管理技士1名で約10業種をカバー可能
- 大規模工事は特定建設業(下請5,000万円以上)が必要
- 港湾法・海岸法等の関係法令との二重規制にも注意
など、業種選定の戦略立案が事業成長を大きく左右します。
YAS行政書士事務所では、港湾工事業者様の業種選定、新規取得、業種追加、特定建設業(般・特新規)、経営事項審査、入札参加資格申請まで、ワンストップでサポートしております。許可取得率100%継続中・100%返金保証付きで、お客様の許可取得を全力で支援いたします。
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