建設業を営む皆様にとって、長年守ってきた「許可番号」や「経営実績(経審の点数)」は、会社の宝とも言える資産です。かつて、個人事業主が法人化(法人成り)したり、事業を息子に譲ったりする場合、一度許可を「廃業」して「新規申請」をし直すしかありませんでした。その結果、許可が下りるまでの約1ヶ月間は「無許可期間」となり、500万円以上の工事が受注できないという大きなリスクがありました。

しかし、2020年の法改正により、「認可」を受けることで許可を途切れさせずに引き継ぐ「承継制度」が確立されました。今回は、この承継制度の仕組みと、絶対に失敗できない手続きの注意点を徹底的に解説します。

1. 建設業許可の「承継」とは何か?

建設業許可の「承継」とは何か?

建設業許可の承継とは、許可を受けている業者(承継元)から、別の者(承継先)へ許可を含む「建設業者としての地位」を丸ごと引き継ぐ手続きを指します。

対象となるケースは主に以下の4つです。

  1. 事業譲渡: 個人事業主の生前贈与や、個人事業の法人化(法人成り)など。
  2. 法人の合併: A社とB社が合体する場合。
  3. 法人の分割: 特定の部門を切り出して別会社にする場合。
  4. 相続: 個人事業主が亡くなった場合(※これだけは事後手続きとなります)。

この制度の最大のメリットは、「許可番号がそのまま引き継げること」、そして「公共工事の入札に必要な経営事項審査(経審)の実績も引き継げること」にあります。

2. 【重要】承継認可を受けるための4つの絶対条件

承継制度を利用するには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。

① 「あらかじめ」認可を受けること(相続以外)

ここが実務上、最も重要なポイントです。事業譲渡・合併・分割の場合、「譲渡日や合併日の前」に認可を受けていなければなりません。 「先に会社を作ってから手続きしよう」は通用しません。譲渡日の少なくとも30日前(埼玉県等の実務では余裕を持って2ヶ月前を推奨)には申請を完了させる必要があります。手続き中に譲渡日が来てしまうと、承継は認められず、新規申請扱いとなってしまいます。

② 建設業の「全部」を承継させること

承継元が持っている業種のうち、「建築一式だけ残して、土木一式だけ譲る」といった一部の継承はできません。承継元の建設業に関する権利義務をすべて一括で引き継ぐ必要があります。

③ 一般・特定の区分が一致していること

承継元と承継先が同じ業種(例:大工工事業)を既に持っている場合、一方が「一般」、もう一方が「特定」の許可だと承継できません。区分が同じである必要があります。

④ 承継先が「許可要件」をすべて満たしていること

引き継いだ後、承継先の会社で以下の要件が揃っている必要があります。

  • 経営管理責任者(経管): 適切な経営経験を持つ役員が常勤していること。
  • 専任技術者(専技): 各業種に対応する資格者が常勤していること。
  • 誠実性・財産的基礎: 500万円以上の資金力等。
  • 社会保険への加入: (2026年現在、最も厳しくチェックされます) 社会保険未加入の会社への承継は認められません。

3. 実務上の注意点:事前相談は「義務」と考えるべき

実務上の注意点:事前相談は「義務」と考えるべき

承継の手続きは、通常の新規申請よりも遥かに複雑です。「承継元」と「承継先」の両方の書類を完璧に揃え、さらに「譲渡契約書」などの法的書類も精査されます。

埼玉県の場合、県庁建設管理課への「事前相談」が強く推奨されています。

  • なぜ事前相談が必要か?: 申請受理後の「補正(直し)」は、譲渡日(Xデー)までのカウントダウンとの戦いです。万が一、不備で認可が間に合わなかった場合、許可は消滅してしまいます。

4. 承継後に引き継がれる「効果」と「責任」

認可を受けると、単に許可証が新しくなるだけではありません。

  • 許可番号: 原則として承継元の番号を継続します(承継先も番号を持っていた場合は、どちらか選べます)。
  • 実績: 承継元の工事実績や経審の点数も引き継がれます。
  • 行政処分: ここが注意点です。 承継元が過去に受けた「指示処分」や「営業停止処分」などの履歴もすべて引き継がれます。M&A等で他社を買い取る場合は、相手企業の過去の履歴を徹底的に調査(デューデリジェンス)する必要があります。

5. 相続(個人事業主)の場合の特例

個人事業主の親が急逝し、子が事業を引き継ぐ「相続」の場合のみ、事後の申請となります。

  • 期限: 被相続人の死後「30日以内」に申請が必要です。
  • 救済: 30日以内に申請し、認可が出るまでの間は、相続人が「建設業者」とみなされ、工事を継続できます。
  • 期限を過ぎたら: 31日目以降に申請しても受理されず、許可は失効します。この30日という期限は非常に短いため、葬儀等の慌ただしい中でも迅速に動かなければなりません。

6. まとめ:スムーズな代替わりのために

「建設業許可の承継」は、建設業者様にとって最大のピンチ(廃業リスク)を最大のチャンス(事業継続)に変える素晴らしい制度です。しかし、その運用には高度な法知識と緻密なスケジュール管理が求められます。

特に2026年現在は、電子申請(JCIP)の活用社会保険の完全加入確認など、数年前とは実務の現場が変わってきています。「昔はこうだった」という経験談で動くのは非常に危険です。

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